俊恵
恋の煩悩。

この煩悩の歌は、シンビの花のものである。
他のいかなる花でも表すことは出来ないと思う。
シンビがこの世で類稀な美の領域の深遠を持つと思えるのは、
このような花に出逢うときである。
シンビは三ヶ月も咲き続けるので、懊悩と索漠を無造作に表してしまう。

恋が燃えさかり、夜毎に男が通い来た春から夏の夜は短い・・・・・
二時間かな・・・・と思うと、既に、四時間が経っている。

そんなみじか夜が、身体に、寝室に刻まれている。
寝室の戸を少し開けて待っているのに・・・・
入ってくるのは傾いた月の光と、隙間を持った秋風ばかりーーー
なんでこんなに夜が・・・・・ながいの・・・・部屋が広すぎる!
−−−「つれない」「薄情者」と言ってもなにになろう。
囚われの懊悩の夜があければ、索漠が、秋風が、黒髪を乱す。

ランの審査では、花の過去、未来は見ない。
シンビの懊悩を掬うことはしない。
審査当日の花だけを見て審査する。

「この人なーーーんにもわからない・・・」と女の人からいわれそうである。
しかたないシステムかもしれないが、シンビから見ればつまらないことであろう。

日本にはシンビの花に訪れる昆虫は一種類もいない。
シンビには、この花のように花びらの隙間に、万感の想いを込める花もある。


                              宇井 清太



一晩中恋の物思いに悩むこのごろは、恋人ばかりでなく、いつまでも夜の明けきらない寝室の隙間までもが、無情に感じられるよ。

夜もすがらものおもうふころは明けやらぬ
        閨の隙さへつれなかりけり
               
俊恵  千載集

  Anguish

Happy Promenade

 MOG95−116
 Happy promenade
 花径 13cm
 1月咲き 大型種

    夜もすがらもの思ふころは明けやらぬ
            
閨の隙さへつれなかりけり       

yuyu10