氷河からの植物遷移

  
   ブルーベリーが自生するまで・・・。
フィンランドのブルーベリーの森。
 針葉樹が優占種として森を支配し、
 その林床のワイルドブルーベリーが自生している。


 表土の下には「永久凍土」。
 短い夏の間、永久凍土の上に、松、カラマツ、
 ワイルドブルーベリーが繁茂する。
 これらの植物の枯れ落ち葉が・・・・
 寒冷のため木材腐朽菌による分解が遅く・・・
 年々堆積する。
 この有機酸で・・・強い酸性土壌に変化する。
 最初から好酸性土壌ではない。

 PHより重要なことは、
 北欧の短い寒冷な夏の期間でも・・・・
 松、カラマツ、ブルーベリーの枯れ落ち葉が地表に
 舞い落ちて堆積し、木材腐朽菌のエサになることである。
 木材腐朽菌は枯れ落ち葉を分解し、
 わずかな「ぶどう糖」を作る。
 この糖を菌糸がブルーベリーの菌根に供給する。
 このエネルギーで・・・・・
 ワイルドブルーベリーは・・・貧しいエリアで
 生き続けてきた。


  こういう貧しいエリアに生息している植物を、
  畑で栽培するのは困難である。
  鉢栽培であれば・・・高山植物栽培のようにつくれる。

  コケモモ、クロウスゴ、ツルコケモモ・・・。

 
氷河が残した不毛の大地に、
いち早く芽生え、エリアを占領する「ヤナギ」。
この姿でも・・・ヤナギ。
なぜ、このヤナギが、不毛の地に生きられるのか。
未だに・・・解明されていない。
不思議な能力を具備している植物である。
第四紀時代には、北ヨーロッパと北米大陸に4回の大氷河期があった。
ワイルドブルーベリーの自生地は、この氷河に覆われ、
不毛の大地と化したエリアである。
長い年月、分厚い氷覆われた大地は、それまで繁茂していた植物を全て枯死させる。
荒涼とした大地に変貌させる。

それまで、枯れ落ち葉と木材腐朽菌で構築されていた
菌ネットワークは、氷河に破壊され、流され、剥き出しの大地になる。
しかし、植物の生命力は強い。

いち早く、この大地に芽生えるのは「ヤナギ」。
開拓者の役割を演じる「パイロット植物」。
ヤナギが、優占種となり、大地をし、やがておおくの枯れ葉を株元に落とす。
枯れ落ち葉が地面に落ちると・・・・
氷河の下で休眠していた木材腐朽菌が・・・生命活動を開始する。
氷河が消えた大地の植物第一遷移である。


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    ワイルドブルーベリーの自生地では、残念ながらワイルドブルーベリーは新参ものである。
    パイロット植物の・・・写真のヤナギがエリアを開拓して、
    多量の枯れ落ち葉を生産し、その後タイガー地帯ではカラマツなどの針葉樹が優占種となる。
    その後、陰樹のワイルドブルーベリーが、木漏れ日を拾って林床で生きるようになる。
    つまり、第一植物遷移、第二植物遷移が作った地表で、生きる植物である。
    氷河が削った不毛の大地は、当初は強酸性ではない。
    第一、第二遷移と進むにしたがって・・・枯れ落ち葉のほとんどは分解されることなく堆積し、
    次第に酸性が強くなり、現在のように強酸性になる。
    カラマツも、強酸性で生きられる針葉樹である。
    ヤナギの次にカラマツも・・・パイロットの役割を担う植物である。
    
    北極に近いエリアのツンドラ地帯では、カラマツも生きることはできない。
    ヒースの丘・・・。
    このエリアにはオーロラが夜空を彩る。
    オーロラが空中窒素を「尿素」に変える。
    オーロラが合成したわずかな尿素の窒素が・・・・地衣類、カラマツ、ヤナギ・・・
    ・ワイルドブルーベリーの窒素源である。
    ここに生きる植物が最も困るのが「リン酸」欠乏である。
    強酸性土壌では、リン酸固定が起こり、植物はリン酸欠乏になる。 
    こういう不毛の地に生きる植物は「VA菌根菌」と共生する。
    地衣類・・・・の生存方法のパクリなのかもしれない。
    

    氷河が作った不毛の地の面積と・・・・
    現在の日本列島の火山が作る不毛の地の面積が違うので・・・・・
    キリシマ連山の新燃岳・・・のミヤマキリシマツツジのパイロットの姿とは異なるが、
    火山の硫黄が作る強酸性と、有機酸が作る強酸性も・・・・
    ツツジ科植物から見れば・・・似ているのかもしれない。

    そういう発想から、ブルーベリーに「硫黄」を施して。PH調整するのは、
    非常に無謀に見えるが・・・・問題は、これで、菌生態系が構築できるか??・
    ミヤマキリシマツツジとブルーベリーの株元の菌ネットワークの違いまで考慮する必要がある。
    ブルーベリーの根元の酸性土壌は、枯れ落ち葉と木材腐朽菌が作り上げたもので、
    火山の硫黄が作ったものではない。
    ワイルドブルーベリーの自生地の林床は、硫黄で作った酸性土壌ではない。
    畑に硫黄をまいて酸性にすることが、本当にブルーベリーが喜んでいるのか??・
    菌根になっていない苗木を・・・いきなり植えて・・・良く育つわけはない!
    そういうことで、初期生育不良で・・・ブルーベリー栽培は挫折する。