掬粋蘭花 Vol−3 掲載歌 歌人 歌集
 春風や 闘志いだきて 丘に立つ                           高浜虚子     五百句
 梅の花 香ながらうつす 筆もがな                          紹巴        連歌発句集
影 すいえんの あまつおとめが ころもでの ひまにもすめる あきのそらかな   会津八一    南京新唱
 風かよふ寝ざめの袖の花の香にかをる枕の春の夜の夢            藤原俊成女     新古今集
 春もやや けしきととのふ 月と梅                          芭蕉        薦獅子集
MOG94−52
 Christmas Promenade
 ゆふさればわが身のみこそかなしけれいづれの方に枕さだめむ   藤原兼茂女 
                                                 後撰集
 あたら夜の月と花とをおなじくはあはれ知れらむ人に見せばや           源 信明     後撰集
 やすらはで寝あましものをさよ更けてかたぶくまでの月を見しかな         赤染衛門    赤染衛門集
 思ふどち春の山辺にうち群れてそこともいはぬ旅寝してしか            素性法師     古今集
痕 梅の花たが袖ふれしにほいぞと春やむかしの月に問はばや            源 通具     新古今集
MOG93−396
 Flower Breeze
 乳ぶさおさへ神秘のとばりそとけりぬここなる花の紅ぞ濃き 与謝野晶子 みだれ髪
 初雁は恋しき人のつらなれや旅の空とぶ声のかなしき                紫式部      源氏物語
 冬ごもり 春さり来れば 鳴かざりし 鳥も来鳴きぬ                  額田 王     万葉集
 照りもせず曇りもはてぬ春の夜のおぼろ月夜にしく物ぞなき             大江千里    新古今集
 汝が胸の谷間の汗や巴里祭り                              楠本健吉     楠本健吉集
 かささぎの渡せる橋に置く霜の白きを見れば夜ぞ更けにける            大伴家持     新古今集
 女とは幾重にも線条あつまりてまたしろがねの繭と思わん              岡井隆   人生の見える場所
 恋すてふわが名はまだき立ちにけり人知れずこそ思ひそめしか          壬生忠見     拾遺集
 恋さまざま願ひの糸も白きより                               蕪村     夜半捜句」集
翻 天つ風雲の通ひ路吹き閉じよ乙女の姿しばしとどめよ                遍照        古今集
 世の中を思へばなべて散る花のわが身をさてもいづちかもせむ           西行       新古今集
MOG94−49
 Meditation Promenade
 忍ぶれど色に出でけりわが恋はものや思ふと人の問ふまで   平兼盛    拾遺集
 いにしへの奈良の都の八重桜けふ九重に匂ひぬるかな               伊勢大輔       詞花集
 白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ               若山牧水       海の声
 恋すればわれも五彩の円光を負へる仏のここちこそすれ               与謝野晶子     瑠璃光
 紅の深染めの衣を下に着ば人の見らくににほい出でむかも             作者未詳       万葉集
 雨晴れて清く照りたるこの月夜またさらにして雲なたなびき              大伴家持       万葉集
 あやしくも心のうちぞ乱れゆく物思ふ身とはなさじと思ふに              永福門院       風雅集
 白珠は人に知らえず知らずともよし 知らずとも吾し知られば知らずともよし   元興寺の僧      万葉集
 ひさかたのみどりの空の雲まより声もほのかにかへるかりがね           藤原師氏       新勅撰集
 くわんおん の しろき ひたいに やうらく の かげ うごかして かぜ わたる みゆ  会津八一  南京新唱 
 血の色の爪に浮くまで押へたる我三味線の意地強き音                岡本かの子     かろきねたみ
 もののふの 紅葉にこりず 女とは                            秋色          たまも集
MOG94−110
 Flower Breeze
 面影の忘らるまじき別れかななごりを人の月にとどめて                西行          新古今集
手づくりのいちごよ君にふくませむわがさす紅の色に似たれば  山川登美子   恋衣
 いくばくのおとりまさりも見えぬ子の負へる負はるるあわれなるかな         大隈言道      草径集
 見わたせば花も紅葉もなかりけり浦のとま屋の秋の夕暮れ              藤原定家      新古今集
 人にあらむ月のなきには思ひおきてむねはしり火に心やけをり            小野小町      古今集
 おもかげに花の姿を先だてていくへ越えきぬ峰の白雲                 藤原俊成      新勅撰集
湿 男より疲れて帰る裏街もすこし夜露にしめりたる頃                   岡本かの子
 翠張紅閨 万事の礼法異なりといえども舟の中浪の上一生の歓会是れ同じ    大江以言      和漢朗詠集
 君ならで誰にか見せん梅の花色をも香をもしる人ぞしる                紀友則        古今集
 黒髪の乱れも知らずうち臥せばまづかきやりし人ぞ恋しき               和泉式部      和泉式部集
 天皇の御代栄えむと東なる陸奥山に金花咲く                      大伴家持      万葉集 
恨 帰るさのものとや人のながむらん待つ夜ながらの有明の月              藤原定家      新古今集
 待つ人のいまもきたらばいかにせむ踏ままく惜しき庭の雪かな           和泉式部     和泉式部集
 古も今もかはらぬ世の中に心のたねをのこすことのは                細川幽斎         衆妙集
 あかあかやあかあかあかやあかあかやあかあかあかやあかあかやの月       明恵     明恵上人歌集
青丹よし奈良の都は咲く花の薫ふがごとく今盛りなり                 小野老           万葉集 

春の苑紅にほふ桃の花した照る道に出で立つをとめ                大伴家持         万葉集

 美のテーマ      掲載歌、句                掲載歌俳人    歌句集   

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