シンビに適する光量は30000ルクス以下といわれています。春の晴天は50000ルクスですので、経験的に40%のシェードは理に適っています。

その方法は夏の管理、栽培法に詳しく記します。
上の図のように作るには光合成を最大にして余分の呼吸作用を抑えることです。
左の図はメリクロンから順調に理想的に成育した株のものです。赤は最初のバルブ、翌年のバルブは緑ですが、赤より2−3回り大きいバルブに成育。茶色は翌々年のバルブですが、緑より更に2−3回り大きくなりました。このように順調に育つと新芽が2本出る場合がありますが、2本をそのままにしますと、バルブは大きくならないので一ケの新芽をカキトリます。
このようにすると、養分が一ケの新芽に集中するので秋には大きいバルブを形成します。

新芽をカクというのは、こういうことなのです。

株が古く、老化してくると芽が2本も出なくなります。芽カキしたくとも芽が出なくなるのです。シンビ栽培の難しさはここにあるのです。

シンビの最高の作りというのは、半分老化して、半分若さを保っている状態を毎年継続させることですが、これを出来る人は世界中でも何人もいないのではないでしょうか。
新芽1ケをカキトル
新芽
新芽1ケを残す
残した新芽が秋までにこのように大きく育てば大成功です。
理想的な生育
外に出したときしばしば新芽がナメクジの害に見舞われますので、ナメキールなどを置くことも大切なことです。

ナメクジには注意して下さい。

日本では、明治時代にグリーンハウスを「温室」と訳したために、「温室」は温かくするために作るように考えられますが、熱帯の植物園でも「温室」を建てます。この「温室」は温めるものではなく、自生地の諸条件を再現するためのものです。

日本の夏は「温室」では温度が高すぎてシンビには逆に悪条件になりますので、日本の夏のモンスーン気候を利用して「外に出して」作ると良いです。シンビの自生地の夏と日本の夏は同じモンスーン気候だからです。

外に出す時期は、桜が散る時期でしょうか。晩霜の無くなった時期です。
鉢の置く場所は「木漏れ日」のところが最適になります。この条件をダイオネットで行う場合が多いですが、趣味で作る場合「すだれ」が良いです。潅水するときこの「すだれ」にもかけるのです。
地面に「コケ」の生えているところをシンビは好みます。
 外に出す時期
シンビの新根の発生、伸長はどんな理由と、条件があるのでしょうか・・・・?
新根を出す理由はもっと水が欲しいからです。何時も十分な水があれば新しい根を出す必要はないのです。シンビの根には水を蓄えるスポンジがあって、貯水量が少ない時に、貯水量を増すために新根を伸ばすのです。
従って、何時も多湿よりも乾湿のムラが必要になります。自生地ではそのような所に生えているのです。この乾湿のムラが一番難しいところで、ランつくり楽しみも苦しみも「水やり3年」という言葉で表わされています。ランの場合はもっと必要かもしれません。品種によって大きく異なるからです。

水を欲しいときに十分やる・・・・ことです。乾燥させて水をやる!!
 新根の発生、伸長  
シンビの開花時期は、桜の開花時期と同じです。シンビの多くの原種は「ヒマラヤの春ラン」です。日本春らんの開花時期も桜の開花時期と同じです。シンビは虫媒花なので冬が過ぎて春がきて、昆虫が活動を始める温度になった時に開花するように進化したのです。
プロのシンビは売れるときに出荷しなければなりませんので、自然の法則よりも需要に合わせた供給の栽培になり、正月から冬に無理に咲かせて出荷します。普通に栽培しては春に咲くのが自然です。

春咲きと秋咲きを交配して創った品種は、12−2月に咲きます。
 シンビの開花の最盛期は・・・・
一般に黒斑病といわれていますが、これはカビ、細菌で起こる病気ではなく、前記したように葉の高温による細胞の壊死で起こるものです。シンビの葉は、40℃以上にもなり葉の細胞のたんぱく質が変質して壊死します。この壊死が多くなりますと面積になり大きい黒い斑点になります。

春には黒斑になることは少なく、葉に1cm程度の黄色の斑点がでます。この黄色の斑点が夏に黒斑に変化します。夏に細胞の壊死が多くなるためです。

黒斑病を防ぐには、葉の温度を高温にしないことです。
黒斑病
桜の咲く時期は紫外線と、葉の温度が高くなり、葉の表面が乾燥するのでアカダニが大発生することがあります。アカダニは紫外線が無い条件では発生しないのです。不妊になるのです。
シンビを温室で作った場合は、桜の咲く時期から1ヶ月前から桜の咲く時期までが最も多く発生します。紫外線カットフィルム下では発生を抑えることが出来ます。
消毒するよりも光の条件を考えたほうが良いです。自生地ではアカダニが大発生することはないのですから・・・・

アカダニ

病虫害の対策
潅水の癖で少ない人は素焼き鉢にポリ鉢をカバーすると非情に調子が良い場合がありますので、ためしに行ってみてください。

新しい鉢
今までの鉢
3cm大きい鉢
両側で6cm大きい鉢
株分けの図は基本を記したものですが、このような鉢でも鉢上げする場合もあります。
鉢の大きさは6cmに止めてください。これ以上大きい鉢はオーバーポットになり良く出来ません。

バルブの数が6−7個位までは株分けしないで鉢上げします。原則として3年は鉢上げしないのですが、その理由で直径6cm大きい鉢に上げるのです。隙間に詰めるコンポストは同じものが理想です。違うコンポストは後の調子が良くありません。

鉢上げの鉢は、株分けと違って痛みませんので、普通の管理で良いです。


 鉢上げ
現在鉢物として販売されているシンビには、ウイルス病はほとんどないので神経質になる必要はありませんが、
古典的品種にはウイルス病がある場合がありますので、使用する器具は焼いてください。私は、ガスレンジで鉢も焼いています。
ウイルス病の対策
人間も手術した後は養生しますが、ランも同じ生き物なので株分けの後は養生しなければなりません。
50−70%の日除けは必要です。最もよいのは紫外線を当てないことです。多湿、乾燥はは空気も鉢も厳禁です。時々葉にシリンジを行って調子をとるようにします。このとき3000−5000倍液の葉面散布は極めて効果があります。
株分けした鉢の置き場所は
株分けは手術ですので新根が出るまで与えません。約1ヶ月で新根が出れば順調です。
株分け後の肥料は
シンビにベストの植え込み材は未だありませんが、素焼き鉢では、花崗岩、安山岩の砕石、軽石、瓦を砕いたもの、
バーク、水苔、籾殻クン炭、それらの混合・・・・。潅水のくせ、冬期の最低温度などで生育に大きな差が出ます。
注意しなければならないことは、1年、2年は調子よくとも3年目にガタッとくるものがあるからです。
水苔で植える場合は、柔らかく植えるのは厳禁です。正座したときの太ももの硬さとか、お絞りの硬さ、テニスボールの硬さなどがよいようです。
植え込み材料
この部分の根を折らない
鉢から株をぬく、又は鉢を割る時、注意することは、根の先端は折れてもダエージは少ないですが、根元を折らないことです。
一番良い方法はナタで一気に割ることです。この方が根はいたみません。

根が腐っていたり、根が少ない株は、2年目、3年目のバルブの葉を半分ぐらい切り、葉と根のバランスを図ります。

長い根は切る
腰高の素焼き鉢
新芽を鉢の中心になるように植える

 植え替えた鉢

この時期の鉢内は濡れたタオルをきつく絞った時の湿り気がベストです。

鉢の形は浅い平鉢、普通の鉢、深鉢がありますが、シンビは根のスポンジ状の組織に水分を保存するので、余分の水は鉢内に残るのは厳禁です。この状態にするには、平鉢では排水の機能が劣りますので使わないほうがよいです。深い鉢が最良で、昔より東洋ランでは腰高の鉢に植えていますが自然の法則に合っています。
鉢の形と排水について
  株分けは2年目、3年目、4年目のバルブの
 3個を付けて行う。

株分けし切るところ
株分けし切るところ
4年目のバルブ
3年目のバルブ
2年目のバルブ
1年目のバルブ
2年目のバルブ
3年目のバルブ
4年目のバルブ
sodatekata2

株分けの方法
シンビは「三代のバルブ」をつけて分ける。
三年前のバルブ、二年前のバルブ、去年のバルブをつけて分けるということです。
下の図を参考にしてください。

腐った根は全部取り除くこと。 
株分けの時期

桜の開花の時期から約1ヶ月の期間が最も良い時期です。
 
シンビが最も好む鉢は「素焼き鉢」です。
プロはプラ鉢で作り出荷していることが多いですが、高級な品種は化粧鉢の場合もありますが、シンビが最も好む鉢は「素焼き鉢」です。どんな植え込み材料でも良いからです。
鉢の種類と植え込み材料には、潅水との関係で一概に言えない深い問題があって、どんな品種にもベストの植え込み材料がないのです。そこに、シンビの奥の深さがあって、プロは2−4年で出荷する方法を研究しているのですが、趣味で作る場合は、株分けして何十年も作るので、プロより難しい栽培を研究することになります。
趣味で作る場合は「素焼き鉢」に合うコンポスト、潅水を基本に考えたほうがよいようです。

ランは株の大きさに比較して小さめの鉢を準備します。
鉢の準備
自生地では誰も株分け、鉢上げなどしなくともランは生きていなす。

私達は鉢に植えているから株分け、鉢上げする必要が出てきます。
大株では3年もすると鉢内が根でいっぱいになり、新しい根が出てじゅうぶん伸びられないことになります。それと共にコンポストが変化して根に害を及ぼす場合が多くなります。シンビの葉は約3年生きて落葉するのですが、この葉の落ちたバルブが多くなり、葉のついているバルブが鉢のふちになって美感も損なうことになります。
以上のことが株分けの主なりゆうです。

鉢物栽培のプロは株分けしません。
メリクロン苗を苗メーカーから購入し、約3−4年作って市場に出荷します。花店、園芸店で販売されている鉢物はそのようなシンビです。したがって、そのような鉢をかったり、ギフトで頂いた場合は、多くの場合「鉢上げ」「株分け」の必要が出てきます。特に花が何本も立っている鉢は、ギリギリに根が詰まっています。




 株分け 鉢上げ

ラン作りの質問で最も多いのが肥料です。

ランの自生地を考えて下さい。誰も肥料など与えなくとも生きて生育して、子孫を残し繁殖しているのです。
つまり、ランはシンビも含めて「作物」ではないのです。農作物のような人間が何千年もかけて「作った」作り物の「作物」ではなく、ランは「野生植物」なのです。ランの育種は1853年からはじまって、最も新しい品種で10代目です。未だ、故郷を忘れていないのです。
自生地での春は、乾期から雨期への移行の時期で、時々雨が降るようになります。

この時々降る雨の水分と、雨に含まれている肥料分を吸収して生長を始めます。
私達はこのことの真似をすれば良いことになります。つまり、液肥であれば3000−5000倍に薄めたものを潅水代わりに与えます。置き肥えは桜の咲く時期に一回目を与えます。
15cm(5号鉢)で油粕を一握りの半分程度でしょうか。シンビは、液肥より油粕のような有機質肥料を好みます。

プロは非常に多く与えて作りますが、普通は、自生地では誰も肥料は与えないことを基本に考えて、水道の水には肥料分がないから、それを、補う・・・・感じで与えて下さい。


 施肥 肥料は・・・・

シンビにとって最も悪い光線は「紫外線」です。

ランの本には光を簡単に「光線」を記してありますが、光線には虹に見られる七色だけではありません。紫外線も、赤外線も、遠赤外線も、x線も、α線も・・・・・あるのです。

日光が強くなる・・・・ことは、シンビにとって悪い「紫外線」も強くなることです。植物が最初水の中で生息したのは、陸上が紫外線が強く生存出来なかったからで、人間では、紫外線は皮膚がんを起こします。日傘を差すのはそういうことですので、シンビにも日傘をさす必要が出てきます。
ダイオネット40%の日除け・・・・というのは、60%の紫外線がシンビに当たるということなのです。
シンビの自生地は冬でも葉の落ちない「照葉樹林帯」です。強い光がシンビに当たることは有りません。私は、「紫外線カットフィルム」を3重に張って、ダイオネット40%を張って作っていますが、このようにすると受粉してくれます。受粉しないような環境では、どんな植物でも良い環境とはいえないのです。
私達のラン栽培では、交配することはないので、この受粉のことは考えないのですが、植物が花を咲かせるのは、受粉して種子を作り子孫を残すためのものですから、このことを考えないラン栽培はありえないのです。
紫外線は「老化」させるので、紫外線を多く与えると「多くの花が咲く」
ランの本にはこのことが書かれているのです。反面、日光に多く当てれば、簡単にシンビは枯死することになります。

直射日光は厳禁です。
シンビの自生地は照葉樹林帯です。

 春です・・・シンビ作りを始めましょう!!

シンビにとって春というのはどういうことなのでしょうかーーー?
シンビはランの進化の途中で自生地の環境条件に適合して生きなければならないので、春夏秋冬の四季、雨期乾期、低温高温、長日短日の複雑な条件に上手く合わせる方法を持ったランです。
このことを念頭においてシンビを見たり、管理をしないと間違うことが多くなります。例えば、カトレアは雨期、乾期の変化に合わせて生育します。シンビほど条件の変化はありません。
シンビも種子が発芽しておおきくなります。シンビの多くは4−5月に開花受粉、翌年の春までかかって種子が完成し、ラン菌の生育で発芽します。つまり、春になって温度が高くなりラン菌が生長繁殖出来ない間はシンビの多くの原種は発芽できないような仕組みになっているのです。シンビの基本的な発芽はこのような仕組みで、この生育のパターンは大株でも同じです。このラン菌の働きは肥料の吸収にも関係しますので、シンビの肥料を与える時期は、ラン菌の生育に合わせていることにもなるのです。

シンビにとっての春は生長を始める季節です

このことを最初に考えて下さい。そして、自生地の彼方に聳え連なるヒマラヤの山々の春を想い描いてください。
自生地の日光を、流れる風を、霧を、空中湿度を、夜間の、昼間の温度を考えてください。さらに、シンビの周囲に生きている他の植物を想ってください。私達がシンビを置いているいるところとは全然異ななっていることが想像出来るはずです。


 春の管理 栽培法

特集予告!
    季節ごとに栽培法掲載します
シンビの自生地の冬期の最低温度は3−7℃、最高温度は15℃程度で、この温度から徐々に上昇して夏になる・・・その温度変化の時期が春です。
室内で栽培する場合は、自然と温度は夏に移行するのですが、温室では、春が無くて一気に夏になるのです。
前記の通気のところで記したように、通気してなるべく永く春にすることです。温度と通気は非常に関係が深く、春の温度管理は「葉の温度」の管理なのです。

シンビの温度は、「室温ではなく葉の温度」です。必ず葉を触ってください。
桜の咲く温度が春のシンビは喜びます。朝の最低8℃程度、日中の最高温度は20℃程度です。
問題は、最低温度から最高温度まで、何時間かかって上昇したかです。自生地では6−8時間かかって上昇します。温室では非常に短時間で最高温度になります。

この上昇時間が問題なのです。じょじょに上昇させることが春の温度管理です。

この照葉樹林帯はヒマラヤから中国、日本にまたがるモンスーン気候が育んだもので、冬でも葉の落ちない葉の表面が光る樹木のことで、カシ、つばき、茶、・・・など。
このような樹木に守られながら、シンビは生きています。つまり、冬から春の乾期の終わり、雨期への移行期の春であっても、カラカラの乾燥はありえないことになります。空中湿度は70%ほどが理想になります。
日本の春の乾燥した風はシンビの好まないものです。親切のつもりで春の風に当てるのは厳禁になります。

春に最も注意しなければならないのは潅水です。
私達の本能として、春になると嬉しくなって水を与えたい・・・・と思うようになります。光は春でも根が生育を始めない間は冬なのです。桜が咲く時期が冬と春の境目でしょう。ラン菌、シンビが生育を始めるのは桜が散ってからです。

潅水はこの桜の散るころから徐々に多くあたえます。シンビの自生地の雨期の始まりは4月中下旬からです。潅水の与える規準は、鉢の表面の根が白くなって、鉢底が少し湿っている状態で与えます。3−4日に1回程度でしょうか。
この時期は、鉢の表面の根が白くなっていないときは与えてはなりません。この時期でも多湿て根が腐る品種は多いです。

この時期に乾燥し過ぎても、新根の発生は遅くなります。時々春雨が降る状態です。春のは、絹糸のような柔らかい雨が降りますが、そのような潅水が理想です。木々の梢を濡らすような雨。そのようなことを思いながら潅水してください。したがって、葉の濡らして下さい。アカダニの発生を抑えることが出来ます。
シンビは柔らかい雨、密やかな湿気をことのほか喜びます。

春はシンビの生長をスタートさせる時期です。ゆるやかな夏への変化、移行のの季節です。

シンビの春の管理は桜の開花に合わせるとよいです。シンビの春の管理で最も重要なことは、桜の開花1ヶ月前からの通気、通風です
室内で作る時はそうでもないのですが、ハウスで作るとき、次のことにじゅうぶん注意しないと大失敗することになります。

温度計が15℃であっても葉の温度は50℃にもなる場合があることです。
朝の光が当たる温室ではしばしばこのような状態になります。

シンビで最も悪い条件、自生地にない条件が、このように根は休眠しているのに葉が高温になることです。自生地では絶対にありえないことです。シンビは「気」を好むといわれるのは「通気」のことです。
温室内の空気を回すのではなく、外の空気を入れるのです。外の温度が3−5℃あれば、朝早くから外の冷たい空気をいれるのです。このようにするとシンビは喜びます。花はじゅうぶんに開いて、先端の花も大きく咲きます。

この時期は温度計を見ないで葉を触って温度を感じて下さい。葉がぽかッと温かいときは、すぐ外の冷たい空気を入れてください。

この時期に葉を温かくすると、非常にシンビの株は衰弱し、このような鉢は、夏に株腐れ病が起こります。株腐れ病は夏に出るので、夏の管理がわるいように思いがちですが、その原因は、春の管理が悪いために株が衰弱した場合が多いのです。

風に当てるのではなく、飽くまでも「通気」です。
温室で他のランと同居したとき、温度は高温を好むランを基準に管理しますが、シンビの葉の温度を考えないとシンビは作れないことになります。


シンビのこの時期は他のランよりデリケートで、葉の温度にじゅうぶん注意してください。

 潅水 空中湿度

最上オーキッドガーデン(最上蘭園)の交配新花の初花の開花