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宇井清太の新品種

Cymbidiumにない色は青い花です。
多くの育種家が挑戦してきたが未だに生まれていない。
イネのゲノムが2001年1月にシンジェンタ「本社スイス」によっておおむね解読された。ランとイネは非常に近い植物なのでイネおゲノムが解読されたのちに、ランのゲノムも近い将来解読されるかもしれない。いや必ず解読される時が来る。そのとき青いシンビの秘密が解き明かされるかもしれない。
他の植物から青い遺伝子が導入されるのか、シンビの遺伝子に含まれているのか・・・・。

 青いCymbidiumは可能か

面白パビリオン

育種で最も重要なことは、優れた形質を優勢に遺伝させる交配親を探し当てることです。
当てずっぽうに交配しても、狙った形質が劣勢遺伝子の場合は、結果は無惨だからです。サンダースリストは、換えて言えば優勢遺伝子のリストでもあるのです。素晴らしい子孫を輩出している交配親は、次々の交配を重ねられている。しかし、新たな交配親を持たない限り新たな領域は開かれない。
 
ランは花を見るまで長い年月を必要とするので、優れた交配親として確かなものにするのが困難で、世界の交配の動向を常に研究して、遺伝子の系譜をたどっていなければなりません。

シンビは2n、3n、4nのように倍数体があり、このことも念頭においておく必要があります。

 良花を生む優勢遺伝子を探す

新品種の開発なくして蘭界の発展はない。
このホームページでも記載しているように、蘭界の歴史は、新種の発見と新品種の作出の苦難の歴史に彩られている。美しい花の陰に歴史があり、夢がある。これは他の植物でも同じで、いま、このことを念頭においてランを栽培している方は少ないですが、栽培は飽くまでもハードで、新品種開発はソフトの開発です。
日本では、このソフト開発は多くの分野で遅れをとっていますが、ランの分野でも同じです。各地で開かれるラン展を見ても、日本のオリジナルの品種があまりにも少ない。新品種作出より原種に流れている。原種は飽くまでも交配の基であろう。
 新品種作出の意義
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ランは新種の発見と新品種の作出が両輪となって発展してきました。現在でも毎年新種の発見は行われておりますが、花の美しい主要なランではほとんど発見され尽くしております。遺伝子の保存を考えると、交配によって遺伝子を保存することも重要になってきます。
現在、日本のラン界は「原種」の栽培は非常に盛んですが、交配は非常に少ないです。交配の系譜を残せるのはランのみですので、多くの人が交配を行ってRHSに登録してください。

自分の品種を創るのは長い時間がかかり、ラン作りの全てを勉強し技術を持たなければなりませんが、非常に楽しいものです。


RHSへの登録

Cymbidiumの無菌播種はMericloneの技術とほとんど同じで、芽の殺菌のかわりに種子を殺菌することになります。
ウイルソン液(水150ccにさらし粉10g)20分で無菌にする。殺菌材は多くありますが、シンビではウイルソン液が安全です。
 無菌播種法
完熟種子は直ちに播種するのが理想です。
保存する場合は、乾燥材を入れたケースに種子を入れ3℃程度の低温で2−3ケ月保存可能です。
 種子の保存
Cymbidiumの種子は約10−12ケ月で完熟します。
稔実の良い果朔では数十万粒の種子が入っています。播種を早く行うには交配後10ケ月の未熟種子でも発芽能力あり、完熟を待たずに行うことが出来ます。
 種子の完熟
ラン作りも交配すると花つくりではなく「果実」作りの感覚で栽培、管理しなくてはなりません。
「落果」してはこれまでの仕事が無になってしまうのです。環境作りが非常に重要になり、自生地の環境になるべく近いものにしなければなりません。特に、子房を高温にしてはなりません。
環境条件は「面白パビリオン葉のすべて」参照。
 環境条件
 ペタル
 Column
 肥大した子房
 ステム
受粉した花は2−3日で花びらは萎れます。シンビは受粉しなければ3ケ月も咲き続けますが、受粉すれば直ちに萎れます。子房は日を追って肥大します。

Cymbidiumは、メシベに花粉が付くとホルモンの作用で子房は肥大します。丁度、バナナと同じです。バナナには種子が無くとも肥大します。種無しブドウ、種無し柿なども同じです。つまり、擬似妊娠です。

完全な受粉でなくとも子房は肥大しますが、多くの場合数ヶ月で落果しますが、中には1年以上も生生と付いていることもあります。


 子房の肥大
昆虫が最も活動するのは午前10時頃です。シンビが最も香りを出すのもこの時間帯です。昆虫を誘うためです。交配をするときは、この自然の法則にのっとり10時頃行うと良いようです。
受粉は非常に微妙なもので、花粉をメシベに付けるまでは人間が出来ますが、それ以後は神の手になります。
交配の時間
Cymbidiumの花は3ケ月も咲き続けますが、交配には開花後10日前後の若くて成熟した花になった時に行います。開花後間もない花は受粉がよくないことが多いです。咲きすぎた花もよくないです。
シンビは1本の茎に多数の花が咲きますが、下に花から分化しますので、充実した花は下から数えて3−5番目あたりの花です。交配にはこの花を使うと良いようです。交配後他の花は摘み取ります。
 花の選択
Cymbidiumの花粉の寿命は長く常温で2−3ケ月受粉可能ですが、花粉は脂肪分が多く乾燥、高温に弱いために、条件の悪いところで咲いた花の花粉は簡単に死滅します。交配を行う場合は、30℃以上の高温にしないこと、70%以下の乾燥にしないことが条件になります。
3−5℃の冷蔵庫に保管すれば3−6ケ月も使用できます。保存方法によっては何年も可能です。
3倍体個体の花粉は使用しないほうが良いです。
 花粉の選択
1 Cymbidiumは受粉して種子が完熟するまで約1ケ年が必要で株への負担が大きく、株の栄養状態は
  稔実にも多きく関係しますので健全なものを選びます。
2 リードバルブに咲いた花を選びます。バックに咲いた花では極めて稔実が悪く、中途で流産して「落果」
  してしまうことが多いです。
3 小型、中型と大型の交配は、小型、中型を母株に用います。逆の交配では受粉しないことが多いで
  す。
4、母株の遺伝子が強く顕れることが多いので、目的の形質があるときは、その形質を持ったものを母株
  にします。
5 Cymbidiumには3倍体個体があり、3nは一般には不稔ですので使用しません。稀に種子が取れるこ
  とがあります。
 母株の選択
Cymbidiumの受粉は「自花受粉」「他花受粉」であり、または同属内の「自家受粉」「他家受粉」を行います。
この性質を利用して「他家受粉」による交配で今日見られるような膨大な品種が作られました。種族の固定系統の維持は自花受粉のみでは衰退するので、同属ないの「他家受粉」を行う事によって「強勢」をはかってきたようです。

受粉の目的は
 1 貴重原種の保存    自花受粉  自家受粉
 2 同じ種の突然変異同士の交配。  同じ種の突然変異と基本種の交配    他花受粉、他家受粉
  人間の手よる突然変異の保存および突然変異の人為的発展。アルビノ、コンカラー花、斑点、スプラッシュ、
  端紅、肉厚、濃色、丸弁、  葉変わり、倍数体・・・・など。
 3 園芸品種の作出  他家受粉  展示会用、鉢物用,切花用品種。
 4 属間交配   他属受粉   Cymbidiumは属間交配は非常に少ないが、僅かであるが成功している。
 5 原種の基本種の大量増殖  自花受粉 自家受粉 同種間の他花受粉、他家受粉。
   絶滅の危機にある原種の自生地採取禁止のラン。

交配の目的は以上のものが考えられます。それによって交配に使用する株を選択することになります。
 交配の計画
Cymbidiumの稔実の確率は、自生地でも高くはないようです。温室の中での交配は極めて低い。理由は、環境条件が悪いこと、交配が繰り返されたために遺伝子の組み合わせが複雑になり過ぎたこと、倍数体、開花時期の異なる交配、自生地の異なる交配、小型、中型、大型の交配・・・などが考えられます。

Cymbidiumにも交配の相性があって、多くの花と受粉するものと、狭い範囲の花と受粉するものがあります。新品種の作出の目的の交配は、当然他家受粉になりますので、交配の相性が重要な問題になります。私の経験では平均すると、受粉の確率は10−20%です。この確率は交配者にとっては非常にきびしいもので、1000交配して種子の取れるのが100−200ということになります。交配による母株の衰弱を考えると、子孫を残すというのは母体を犠牲にして行う行為です。
 受粉の確率
ランはほとんど虫媒花です。Cymbidiumも虫媒花です。シンビには多くの原種があり、自生地も異なり、そこの生息している訪花昆虫もことなります。ランは進化の頂点にあり、自生地の条件を巧妙に利用して生きています。受粉の時はそこに生息している昆虫を利用しています。

Cymbidiumの花の形、色彩、香り、Lipの色彩、斑紋、機能、蜜、開花時期・・・・など、その全てを結集して受粉に賭けるのです。植物が生きるというのは種族の繁栄のためで、花を咲かせ受粉を行い種子を実らせるために・・・・・ラン菌と共生して生きてきたのです。
Cymbidiumの受粉については「面白パビリオン 花のすべて」参照。
 Cymbidiumは約1年で発芽する。
 Cymbidiumの受粉、交配
前記のラン菌共生による発芽は非常に確率が低く大量の苗はできない。それでも、次々に新交配がRHS登録される。
アメリカのナドソン博士は、ラン菌が種子に供給している養分を分析し「糖類」であることを突き止めた。胚乳の持たないランの種子はラン菌から「糖」を供給されて、それをエネルギーにして細胞分裂して発芽していることを発見したのである。ランの核は「単細胞」で分裂を繰り返してプロトコームを形成する。
医学の分野ではコッホが細菌、カビの無菌培養法を完成させ、培養基の作成、培養基の殺菌法を完成させた。ナドソン博士はコッホの細菌無菌培養技術をランの無菌培養に応用した。培養基の作成には多くの蔗糖を添加した培地を用いた。この蔗糖が浸透圧の作用で種子の中に入り発芽させるという考えである。

この実験は見事に成功した。1910年のことである。
熱帯を自生地にする多くのランで成功した。

温帯、寒帯に自生する多くのランでは、現在でも無菌播種に成功していないものが多い。Cymbidiumでもカンラン、春ランなどではリゾームの発生があり、リゾームからの発芽を見ない場合が多く、リゾームが発芽する条件の究明が残されている。
カンラン、春ランではCymbidium原種グループ1(面白パビリオン 葉のすべて参照)の原種、それらの園芸種と交配した種子は発芽は容易である。

カンラン、春ランなどの温帯に自生するラン、サギソウ、チドリなどの寒帯に自生するランには「発芽抑制物質」「発芽抑制機能」があり、無菌播種法の温度20℃の一定の培養温度では発芽を見ない。発芽抑制物質は種子が完熟するのが秋で、そのまま発芽すれば、冬にプロトコームが枯死するため、春まで発芽出来ないようにしている。温帯には四季があり、春に発芽すれば秋までに大きく生長でき冬を越せることになる。リゾームが発生するランでは、地中で保護され生存することになる。
近年の研究では、発芽抑制物質、発芽抑制機能は完熟種子に有り、未熟種子に無いことから「未熟種子」を無菌培養すると発芽するランがあることが知られて、一部では実用化されている。
一部のランでは、ラン菌との共生関係をフラスコの中でも行わせ発芽させようという研究もなされている。ラン菌を純粋培養してフラスコでランの種子にラン菌を接種する方法で、一部で成功しています。

以上のように、ランの種類の中には未だに無菌培養に成功していない原種が多いが、Cymbidiumでは多くの原種で成功して今日のような膨大な品種が作出された。


ラン無菌播種法の開発
プロトコームの形成
種皮を破る
核が肥大する
発芽、葉(鞘葉)
葉緑素が発生
プロトコーム
 Cymbidiumの発芽順序

TOP

西欧のラン界はドミニー博士の発芽成功によって新たな展開をすることになる。他の植物と同じように園芸品種を創る道が拓かれたのである。バラ、チュウリップ・・・・のように非常な熱意の下に交配実生された。
Cymbidiumでも交配が行われ1889年Eburneo−lowianumがRHS登録された。
現在、シンビの種子を親鉢の播いて発芽させる栽培技を持っている人が日本に何人いるのか・・・と思うと、いかに、当時の英国のラン栽培が熱を持っていたか理解出来る。当時の栽培技術が自生地の諸条件を再現したか解る例である。
 種皮
 核
 種子の内部
 ランの種子
ドミニー博士の考えたランの実生法は、ランが植えられている鉢にはラン菌が生息している・・・・という想定のもとで、株基に種子が播かれた。
種子に菌糸が伸長し、菌糸が出す酵素はランの種皮を融かし破り核に菌糸が付着、菌糸は核に養分を供給する。養分を供給された種子は発芽する・・・・という仮説の下で実験は行われた。
このとき用いられたランは「紫ラン」の仲間のランです。
1852年に播かれ、数本発芽したのが1853年。仮説は見事に実証されたのである。
Cymbidiumの種子は200μーー300μの大きさで(ランによっては、これより小さいものも多い)、ランの種子には栄養の貯蔵庫の胚乳がありません。発芽に必要なエネルギー源をもたないランの種子は、どのようにして発芽するのか解らなかったのです。
ラン菌との共生関係。

日本の野性らん研究の鈴木吉五郎先生は、野性らんの「ウチョウラン」の実生法を開発した。それは「日本春ラン」の鉢にウチョウランの種子を播くと発芽することを発見した。春ランに共生するラン菌がウチョウランの発芽を助けるということを実証した。これは、ランの発芽にはそのラン特有なラン菌でなくとも良いという発見である。春ランの鉢の表面に新しい水苔を敷き、小石で水苔を抑えウチョウランの種子を播くと1年後に小石の間から発芽してくるという方法である。
 ラン菌共生による発芽の解明
写真入れる
Cymbidiumの最初の交配種
 ラン交配、発芽の歴史
Cymbidiumのアロイフォリウムが、アフリカ南端の嵐の海を始めて越え英国にもたらされたのが1789年。それから約100年の間にほとんどの原種は西欧にもたらされた。キリスト教文化では原種を交配してより優れた個体を創る。ランも例外ではなく、多くの人達によって他の植物と同じように交配され種子が蒔かれた。この時代ラン菌の存在、ラン菌との共生関係が知られていないために、発芽させることは出来なかった。
人間がランの発芽に成功したのが1853年。英国のドミニー博士によってなされた。
英国にRHSが設立されたのが1853年。ランの交配の系譜はこの年を源流とする。今日まで脈々と流れる育種の流れである。
 Cymbidium
    交配
新品種作出のすべて

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